絵本の読み聞かせは、だれでも子供に戻れる『魔法』なんです。

「絵本って、なんだか懐かしいんですよね。」

佐々町図書館で読み聞かせ会を開催している伊達さん。おっとりと優しい笑顔は、お話をしているだけで、こちらも癒されてしまう。この日の読み聞かせ会では、佐々に住む7組の親子が参加した。話し方だけではなく、その表情や身振り手振りまで、子供達の反応を見ながら、参加者と一緒に絵本の世界に飛び込んでいく。
「読み聞かせの道具も手作り。子供たちの顔を思い浮かべながら、どうやったら飽きさせずに聞いてくれるかなって。いつも悩んでいます。」

伊達さんは、佐々町に図書館ができる前から色々な場所を借りて読み聞かせ会を開催していた。佐々町に図書館ができると聞いて、伊達さんはすぐに足を運んだ。
「読み聞かせ会をやらせてってお願いに行きました。もう、押しかけボランティアですよ。」
伊達さんの意気込みに図書館側も全面的に協力を申し出た。
「佐々はボランティアの人たちが多くて、朝からトイレを掃除したり、花を植え替えたり。私は自分の楽しみでやってますから。こんな場所があって本当に幸せだなと思っています」

読み聞かせが子供の心を育てる

伊達さんは五島に生まれ育った。当時は戦時中。五島には図書館はもちろん、子供用の本もなかった。たまに叔父さんが東京から本を買って来てくれた時はむさぼるように読み返していたと言う。
「読み聞かせをすることで、子供の心が育つんです。それをお母さんにわかってほしいんですよね。」

佐々町では『ブックスタート』という活動を行っている。赤ちゃんが生まれて、5、6ヶ月後の検診の際に町から本をプレゼントする取り組みだ。ただ本を渡すだけではなく、検診メニューの一つとして、子供にとっての読み聞かせの大切さを、伊達さんがじっくりと親たちに説明する。『ブックスタート』を始めてから、図書館の読み聞かせ会に乳児を連れてくる親子も増えたという。

幼い頃の思い出が蘇る

「読み聞かせを続けていると、子供が変わってくるんですよね。初めはチョロチョロと動き回っていた子供が、だんだん前に出て来て、一生懸命集中して聞くようになるんです。そんな子供達の成長を見ていると、本当に嬉しくなりますね。私たちも生きがいをもらっています。」

読み聞かせ会は普段、小さな子供向けに開催されることが多い。しかしある時、高校生向けに学校で読み聞かせ会を開催する機会があった。そして、最初の絵本は、いつも子供達に読み聞かせている、『いないいないばあ』

「みんな高校生ですから。半分は大人。『えー!そんな子供の本を読むの?』なんて言ってたんですけど。だんだんと一生懸命に聞いてくれて。普段の授業でも数行しかレポートを書かない子が、感想文をぎっしり書いてくれたりしたんですよね。」

小さな頃から読み聞かせを体験している子たちは、大人になっても素直に童心に帰ることができるようだ。
「絵本の読み聞かせをすることで、幼い頃の思い出が蘇ってくるんでしょうね。もちろん今でも良い子たちですけど。みんな表情が幼い子供の頃に戻るんですよ。」

優しく目を細めた笑顔で言う。
『だれでも子供に戻れる。それが読み聞かせの魔法なんです。」
とすると、伊達さんは絵本から飛び出した『魔法使い』ということか。